先週、札幌出張があり、帰り札幌駅の書店で買った。すごいタイトルの本だなこりゃと思い、買ってみたのだ。
私も予てより人間は、いや日本人は長生きしすぎだと思っていた。誰もがピンピンコロリならいいだろうが、現実そんなことはあり得ない。
たまにテレビで、「元気ですね~。おいくつですか?え~。90歳ですか!今でも毎日こうして畑仕事してるんですか?」的なお年寄りが出てくるが、それは超~ごく一握りだ。
人生100歳時代といわれるようになり、テレビで見るような元気でたくましい老人がたくさんいて、みんな明るく過ごしているなんて思ったら大間違いだ。
多くの超高齢者は、寝たきりで、介護が必要で、中には老々介護の地獄で、本人自身が生きていることを幸せだと思えているかどうか大いに疑問な場合がある。
たとえカネがあって、最高峰のサービスが受けられる老人ホームに入所できたとしてもどうなのだろう。幸せなのだろうか?もちろん人にもよる。人それぞれだが。
私の母も認知症になり特別養護老人ホームに入所している。義母もケガにより片足切断となり自宅で介護生活をしている。
ハッキリ言って、日に日に本人たちの不幸感が募っていくように思うのだ。
とくに義母は、頭はハッキリしているので、自分が寝たきりとなったことで、私の妻である娘にかかる精神的、肉体的負担を申し訳なく思い、「死にたい」と言っているのが現状だ。
私の母は、入所してもう2年以上になるが、その間たぶん、ただの一度も笑ったことがないだろう。
身の上話はここでやめるが、どう考えても人はトシを取ればとるほど、不幸になるのではないか?
トシを取ればとるほど、体も動かなくなり、醜くなり、介護の地獄が待っている。長生きすればするほど、周りの人が先に逝ってひとりぼっちになっていく。それでも人間は簡単には死ねない。どんなに望まぬ長生きでも、お迎えが来るまではどうにもならない。
そうならずにおおむね良好な人生は70歳ぐらいまで元気で過ごし、そこらへんが寿命というのがちょうどいいのではないかと思うのだ。
70歳くらいで自然に終われるなら、年金の問題も介護の問題も大きく改善され、多くの国民がリタイア後の不安のない生活ができる。それは可能となる気がする。
もし、この本のように「七十歳死亡法案」が世に出ればと考えてはみたが、あり得ない荒唐無稽な話で現実味がないのでなんと言えん。
とにかく、この本は人間の尊厳に迫った恐ろしいテーマのヤバイ本かと思ったが、ハッピーエンド的な明るい感じで終わったことが、逆に読後感を悪くした。逆にな。なんの逆かわからんが。
寝たきりで、わがままな老婆の「下の世話」の強烈な苦痛などが書かれていながら、最後は自分でトイレに行けるようなったなんて、バカなハッピーエンドで、そんな話を読んでもしょうがないとしか言いようがない。
ただ、この本はかなり、介護や家族、人生の現実を描いている。読みどころはかなりある。身につまされる人は多いだろう。
とにかく、私は4人の親の老後を抱えているので介護の現実がまだまだこの先頂点に向かってというか、地の底に向かってというか、加速度がついていくので、他人事ではない。なので題名だけでこの本を手に取ったと思う。寝たきりが自分でトイレに行けるようになったなんて話を1ミリも望んでなかったが。
人間はどうせ死ぬ。それを法律で70歳に決められたとき、いつまで生きてるのかわからない不安がそれで解決するのか?人間はそれで楽になるのか、それとも漠然とした命の無意味感を味わうのか。常にはっきりした余命の中で生きるとはどういうことなのか。余命がはっきりしないからいいのではないか。みんな頭ではいつか死ぬとわかっていながら、自分はまだ死なないと常に思っている。そういうことが深い考察で書かれているのかと思ったが、絵にかいたようなハッピーな終わり方に、介護の真っただ中の人には、終盤でなんじゃこれ?ってなっちゃうんじゃないかな。