短い雑記

名乗るほどのものではないオッサンの短い雑記です。含蓄のある事、書けと言えば書けますよ。生存確認用ブログです。

ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?

人間の意思決定の仕組みについてここまで解説した本は他にはないと思います。この本は間違いなく名著であり、私たちが日常的にさまざまなバイアスに支配されていることを痛感させられます。本書に書かれているバイアスについて理解するだけでも、自分の意思決定をより良いものにすることができると思います。私にとっては、定期的に読み返したい一冊です。

行動経済学の名著であると広く知られていますが、この本は解説書ではなく、むしろ研究回顧録のような印象です。各章の最後にまとめ的な文章がありますが、「だから何?」という感じが少ししました。内容は素晴らしいものの、バイアスやヒューリスティクスについて簡潔に知りたい人にはあまり向いていないかもしれません。

私は初めて行動経済学の本として本書を読みました。その後、予想通りに「不合理」と「明日の幸せを科学する」などの本も読みましたが、この本の面白さや幅広さには及びませんでした。最初は少し読みにくそうに感じましたが、その感じは最初の一部分だけでした。

本書『ファスト&スロー』とは、文字通り「早い思考:fast thinking(システム1)」と「遅い思考:slow thinking(システム2)」という意味です。私は「早い思考」を無意識レベルの感情を伴った認知や判断、それに直観に近いものと理解しています。そして、「遅い思考」とは、脳の前頭葉が脳の他の部位の反応をコントロールするように、「早い思考」をいったん受け止めて、時間をかけて熟慮することと解釈できます。

本書『ファスト&スロー』では、多くの「早い思考」の例が紹介されています。これらの実験は、ノーベル賞を逃したエイモス・トベルスキーと共に行われました。実験結果によって明らかになった非合理な習慣は、一般に「ヒューリスティックス(Heuristics)」と呼ばれています。

「ヒューリスティックス」とは、完全な解決には至らなくても、情報不足を補い、まずまずの回答を速やかにもたらすアプローチのことを指します。この考え方は最近では人工知能の世界でも利用されています。本書は、非合理な思考となるかもしれないヒューリスティックスを理解し、その罠にかからないようにしようというものです。

「早い思考:fast thinking(システム1)」の罠にかからない方法は、正に「遅い思考:slow thinking(システム2)」なのです。ゆっくり時間をかけて熟慮すること、つまり先走らないことが大切です。この罠を防ぐための研究が、本書の発行前後でたくさん行われています。

この本は、生きることを問い直す指南書です。

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