短い雑記

名乗るほどのものではないオッサンの短い雑記です。含蓄のある事、書けと言えば書けますよ。生存確認用ブログです。

ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

 

ちょっと高い本です。

ピダハン語を話す人たちの生活と文化のみならず、それに関わった著者自身の人生も重ね合わせながら言語の起源を語っています。従って、「文化史」「個人史」の両面から言語の持つ意味(主としてコミュニケーション手段としての)がリアルに浮き上がってきます。

また、言語使用のための脳を含む身体的機能を、分化の側面からではなく統合的側面から見ており、モジュール説に対する批判となっています。ただし、医学的事実(言語機能の主要な部分が大脳の左半球に偏在している)については未検討であり、引き続き考察を深めていかなければならないと述べられています。

著者が冒頭で書いているとおり、自らの人生を捧げた研究について率直に書かれたもので、読み物として面白いと感じました。信仰や善悪、暴力について考える材料となる一方で、言語学の視点で専門的に書かれた部分は、言語学そのものに興味がなければ読みにくいかもしれません。そこで詰まるくらいなら飛ばして、最後の締めくくりまで読むことをおすすめします。私のようにただの趣味で読む人にとっては、この本の魅力は言語学の外にあると感じました。

ただ、残念なのは、著者が文字通り人生を捧げた研究であるがゆえに力が入りすぎている点で、「苦労して言語学史を揺るがす発見をしたのに、頭のカタイ奴らが理屈ばかりをこねて認めようとしない」といった他者への攻撃が所々に混じっていることです。研究の渦中にいない者には読むに堪えない部分もあるかもしれません。

 

 

 

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